ヴィーガンスイーツをご存知でしょうか?
それは、動物性素材を一切使用しないお菓子のこと。
カロリーは控えめで、
卵や乳製品にアレルギーがある方でも
安心して食べられます。
種類が豊富な熊本のフルーツをおみやげにするなら、
ヘルシーなヴィーガンスイーツが編集部のおすすめ。
人気の「ikushiro.」のパティシエ草野育史朗さんと、
草野さんを支える
農家さんのお話をご紹介します。
ストロベリータルト
生ケーキ冷凍便
5種類 2,500円(税込)。
牛乳・卵・バターなどの動物性素材と小麦粉、添加物、白砂糖は不使用。
ピスターシュ・フレーズ
ヘーゼル・ショコラ・タルト
蜜いも・みかんケーキ
ティラミス
植物性100%の
お菓子づくり。
「ヴィーガンスイーツに入るのは、植物性の食材のみ。そのためフルーツや野菜の自然な甘味を引き出すようにつくらないといけません」と語る草野さん。さらに、「一般的なスイーツづくりでは、白砂糖を使用します。白砂糖は不純物を除去して砂糖の成分を抽出するため、甘味が強く出ます。しかし、ミネラルやビタミンは失われてしまいます。一方、ヴィーガンスイ―ツでは精製されていない砂糖を使用します。そのため、ミネラルやビタミンを含み、甘さのなかにも多様な味わいがあります。素材にメープルシロップやドライフルーツを用いることで、多層的でやさしい自然の甘味が生まれます」
そう語る草野さんのご出身は、埼玉県さいたま市。なぜ熊本に移住されたのでしょうか?
草野育史朗
「東日本大震災がきっかけです。その前に、私がパティシエをめざした理由と、ヴィーガンスイーツとの出会いについてお話できればと思います。関東のフレンチレストランでスイーツ担当になり、そのおもしろさに夢中になったことが始まりです」。その後も草野さんはスイーツづくりを学ぶため、関東のさまざまなお店で修行します。けれども、朝5時から深夜まで働く日々を続けるうち、体を壊してしまいます。働きかたを変えようと思い、これまでに出会った農家さんを思い出し、農家をめざすそうと思い立ちます。そして、千葉県の「Brown’s Field」を農業研修で訪れた際、ヴィーガンスイーツと出会いました。「動物性素材を一切使用しないスイーツなんて、できるの? そもそもおいしいの?」と疑問を感じた草野さん。しかし、実際に食べてみると、素朴ながらもやさしい甘さに衝撃を受けました。
やがて1年の農業研修を終えたとき、農家ではなく、やはりパティシエとしてヴィーガンスイーツを手がけられたらと思い直した草野さん。東京都内で手売りで販売をした時期を経て、2010年、奥様の地元である静岡県富士宮市で店舗を構えます。しかし翌年、東日本大震災が起き、被災。原子力発電所の事故による影響を考慮した結果、遠く離れた九州・熊本への移住を決めたのでした。
「販路もなく、最初はどう売るか手探りの状態でした。実店舗は構えず、マルシェでの販売を始めました。そこで熊本県内でオーガニック食品の販売を行う『有機生活』さんと出会い、販売店舗を提供してもらえることになったのです」。そして程なくして、自身が運営する卸販売の「ikushiro.」を開きました。
焼き菓子アソート缶『ビジュ』970円(税込)。
クマモト・カライモ・タルト各種。
タルト生地はサクサク食感を出すため、しっかり焼き上げます。
「調理器具は、まさにスイーツづくりの相棒です」と草野さん。
熊本の食材を
スイーツで世界に。
草野さんが熊本に来ていちばん驚いたのは、食材の豊富さでした。特にフルーツや野菜は、収穫量が全国でもトップクラスのものが多く、できるだけ地元の食材を使うよう心がけています。取材した日は、熊本の名産品「からいも」を使ったタルトを開発中でした。「水が豊富できれいだからこそ、どれも非常においしいです。素材のよさを活かしつつ、世界中の人に楽しんでいただけるヴィーガンスイーツをつくりたいです」と語る草野さん。
また、食材の仕入れ先は、なるべく生育環境や、生産者の人柄を知っているところにしているそうです。「おいしさも大切ですが、同じくらい“安全”も大切です。そのため信頼できる農家さんから、安全でおいしい食材を厳選して仕入れています」。特に草野さんがこだわるのが、いちごです。「香りも、酸味と甘味のバランスもよく、『ikushiro.』のスイーツづくりには欠かせません」。そのおいしさの秘密を知りたいと草野さんに伝えると、仕入先の農園に案内してくれました。
無農薬の
いちごづくり。
「ikushiro.」で使用するいちごを育てるのは、「農薬ゼロのだいしん農園」。ビニールハウスのなかには、大粒の真っ赤ないちごが実っています。
「うちの農園では、農薬や化学肥料、家畜肥料を一切使用しません。それらの匂いがつかないため、いちご本来の香りや味を楽しんでいただけます」と語る代表の楠田大伸さん。楠田さんがお父様から農園を引き継いだ際、農薬によって体調を崩したことをきっかけに、無農薬に取り組み始めたそうです。
「いちごは、多くの害虫が寄るため、農薬を使わないと数はつくれません。また、水が足りないと育たず、水をあげすぎると味が薄くなる、加減の難しい果物です」。無農薬にこだわるだいしん農園の生産量は、毎年500kg前後。「農薬を使い、1反の農地でいちごをつくれば、年に3tは収穫を見込めます。しかし、おいしいものをつくりたいので、それはしません」
害虫は手作業で取り除き、
1粒1粒大切に
育てています。
いちごの生育に最適な
土・室温・水の量が保たれるよう、
工夫や改善を繰り返しています。
そんなだいしん農園のいちごは“紅ほっぺ”という品種。「酸味と甘味のバランスがよく、なかまで赤いので、ジャムにも向いています」と楠田さん。食べてみると、酸味が甘味をしっかり引き立て、いくつでも食べられそうなくらいさっぱりした口当たりでした。ジューシーさも感じられます。
パティシエの草野さんと、生産者の楠田さんのこだわりが組み合わさり、「ikushiro」のヴィーガンスイーツは生まれます。熊本県内にも販売店で買えるほか、通信販売もあるため、熊本旅行から帰ったのち自宅に取り寄せ可能です。ぜひ見た目も美しくおいしいikushiroのヴィーガンスイーツを、おみやげにどうぞ。
(右)農薬ゼロのだいしん農園代表・楠田大伸(くすだだいしん)さん、
(左)スタッフ・黒田智子(くろだともこ)さん。