マンガを授業で学び、つくる。ほかにはない公立高校。「高森高校マンガ学科」

2026/08/20

マンガを授業で学び、つくる。ほかにはない公立高校。「高森高校マンガ学科」

Photo/
Hara Fumihiro
Text/
Taninaka Takashi, Kurata Shuhei

熊本県立高森高校マンガ学科は、全国の公立高校で初めてマンガを専門に学べる学科として2023年(令和5年)に設立されました。
そこで学ぶ生徒と、彼らを見守り指導にあたる教師に、マンガ学科の特色を聞きました。

※記事内の情報、学年、所属は2025年9月時点のものです。

県内外から
生徒が集う学校。

 今年で開校79年目を迎えた熊本県立高森高校。同校に新たに設立されたマンガ学科には、県内出身者のみならず、北は栃木県から南は沖縄県まで、全国各地からマンガづくりを学びたい生徒が入学。2025年現在、3学年合計で118名が在籍しています。
 「高森高校マンガ学科は、高森町、熊本県教育委員会、高校、そして高森町に第二本社を置く出版社コアミックスで四者協定を結び、2023年4月に設立されました」。同学科設立の経緯を、高森高校校長・鳴瀬幸裕さんはそう語ります。学校だけでなく、四者が運営に関わることにより、生徒の創作活動を支える環境づくりを行っているとのことです。
 現場で指導を行う美術教師の緒方泰志さんは、学科の特色について、次のように語ります。「なにより、プロのマンガ家や編集者から直接指導を受けられることです。また、本校には、4名の美術教師がいます。絵の基本を着実に学べることも特色です」。マンガ学科にはマンガ制作の技術を学べる授業が1年次は週2時間、2年次は週4時間、3年次は週に8時間あります。この授業では道具の使いかたなどの基礎的なことから、オリジナル作品の制作まで、幅広く学ぶことができます。
 本年度から勤務する教師・直江真衣さんは、働いてみたい学校として高森高校を希望し、着任しました。「意欲の高い生徒が多く、その期待に応えられたらと思います。制作のための環境が整っており、指導者もいます。生徒が成長できる場だと思います」

プロのマンガ家も使用する本格的な機材が導入されています。

プロのマンガ家も使用する本格的な機材が導入されています。

マンガ学科で、自分が変わる。

 2025年9月下旬、マンガ学科で学ぶ3年生(当時)二名にお話を聞きました。一人は、昨年「月刊コミックゼノン」(コアミックス刊)のコミックゼノン漫画大賞で賞を獲り、同誌に作品が掲載された荒木桜輔さん。もう一人は、元田柚芭さん。マンガ学科の生徒を中心に、91名(当時)が所属する部活動、マンガ部の部長を務めた生徒です。

荒木桜輔(あらき・おうすけ)さん

コミックゼノン漫画大賞準入選
荒木桜輔(あらき・おうすけ)さん
荒木さんは寮生。歩いて10分の通学時間だそう。共同生活のなかから生まれるアイディアもあります。

『海の声が聞きたくて』は第29回コミックゼノン漫画大賞で準入選。「月刊コミックゼノン」2025年4月号に掲載。WEBマンガサイト「ゼノン編集部」で読めます。
『海の声が聞きたくて』(ゼノン編集部)

元田柚芭(もとだ・ゆずは)さん

マンガ部部長
元田柚芭(もとだ・ゆずは)さん
元田さんは5時に起きて熊本市内の自宅から通学。学校の課題は、電車移動の途中で済ませるそうです。

Q
マンガ学科で過ごした3年間はいかがでしたか?

荒木 マンガが好きなクラスメイトに数多く出会うことができ、人とのコミュニケーションが苦手な私にも、友人ができました。マンガ家をめざす仲間がいつも周りにいて、切磋琢磨できる環境だからこそ、作品を雑誌掲載できるまでに成長できたのではと思います。
元田 入学前は気難しそうな人が多いのではと想像し、不安でした。でも、実際は行事にも意欲的な人ばかりで、団結力のあるクラスでした。私はもともと社交的ではない性格ですが、マンガ部の部長になり、いろいろな経験を経たことで、人と話すことに苦手意識もなくなりました。

Q
荒木さんに質問です。『海の声が聞きたくて』を制作したきっかけと、その過程で印象に残っていることを教えてください。

荒木 人間関係でうまくいかないと感じることが私にはあり、そんなもどかしさをかかえた人たちの心に寄り添えるキャラクターをつくれたらと、本作品を制作しました。小さいころから水族館が好きだったので、海の生き物を描いています。
 描きはじめてみると、思ったより時間が必要で、半年ぐらいかかりました。何度もネーム(大まかなマンガの設計図)を描き直しては担当の編集者に見てもらいました。話すのが苦手なため、自分の考えを打ち合わせできちんと伝えられなかったのですが、何度もやり取りを重ねて理解とフォローをいただき、形にすることができました。
 作品掲載後は、作品を読んだ方から「元気をもらいました」などの感想がSNSで届いたりして、とてもうれしかったです。

校長の鳴瀬幸裕さん

マンガづくりの土台となる、ネーム制作の様子。

Q
元田さんがマンガ部の部長になった経緯と、その経験から得たものを教えてください。

元田 部長を決めるときに、このマンガ部でがんばりたいという強い思いがあり、立候補をしました。
 部長になってみると、なにごとも試行錯誤が必要でした。部員が楽しめるよう企画を立てたり、どうすれば部活動をしやすいかを考えて行動をしてきました。その結果、臨機応変に対応する力が身についたと思っています。

Q
お二人の今後の夢を教えてください。

元田 私は卒業後、マンガ編集者をめざします。マンガ家の創作活動をお手伝いしたいです。
荒木 私は美術系の大学に進学し、絵画の技法を学ぶことでマンガの表現方法を広げたいです。そして、アニメ化や映画化される大ヒット作品を描けるようになりたいです。

(左)緒方泰志さん。(右)直江真衣さん。

(左)緒方泰志さん。(右)直江真衣さん。高森高校の美術教師は4名と充実しています。

校長の鳴瀬幸裕さん

校長の鳴瀬幸裕さん。赴任して感じたのは、興味があることに真摯に取り組む生徒たちの熱意。

 
熊本県立 高森高等学校

●所在地/〒869-1602 熊本県阿蘇郡高森町高森1557
●電話番号/0967-62-0185
●WEBサイト/https://sh.higo.ed.jp/takamorish/

「pomodoro」(ポモドーロ)とは……「pomodoro」(ポモドーロ)とは……

 「熊本がもっとおいしくなる」をコンセプトに、熊本のグルメ情報や文化をお伝えするフリーマガジンです。年3回発行し、熊本市内の交通要所や観光名所等で配布しています。

 pomodoroは、トマトを意味するイタリア語。
 イタリア料理の食材と、熊本で採れる食材は共通点が多いことから名付けました。

 フリーマガジンとウェブ版である当サイトは、阿蘇の高森町に第二本社を置く出版社コアミックスが発行・運営しています。