上様の夏の愉(たの)しみは、甲佐町やな場の鮎。

2026/08/18

上様の夏の愉(たの)しみは、甲佐町やな場の鮎。

Photo/
Nakagawa Mariko, Mori Kenichi, Kuribayashi Shigeki Styling/ Joh Motoho
Text/
Sakai Yuji

甲佐町やな場

甲佐町やな場。
産卵のため川を下る7月下旬から8月が、最も多く鮎が捕れる時期。

甲佐町やな場の鮎
甲佐町やな場の鮎
甲佐町やな場の鮎
甲佐町やな場の鮎

 熊本県甲佐町(こうさまち)のやな場をご存じでしょうか? 捕れたての鮎を、川のせせらぎを眺めながら刺身やお吸い物などで味わえる、鮎の名所です。「やな」とは、竹を簀子(すのこ)のように並べて編んだもの。そこに、川を泳いできた鮎を誘い込んで捕る、伝統的な鮎漁の仕組みです。毎年、切り出された竹でやなを組む様子がテレビで放送されると、夏の訪れを感じる、熊本県民にとっては風物詩の一つです。
 歴史をさかのぼると、甲佐町は町の中心部を流れる緑川の氾濫(はんらん)に悩まされる土地でした。しかし、1608(慶長13)年、治水の名手としても名高い熊本城築城主・加藤清正が、夢で見た風景をもとに同地に堰(せき)を築いたところ、水害がおさまり、町が発展する機縁となったという伝説がある土地です。この清正が築いた堰によりできた支流に、1633(寛永10)年、藩主・細川忠利(ほそかわ・ただとし)の命でつくられた水田用水調節の場が、やな場の始まりといわれます。しかし、上質の鮎が捕れることから、代々の藩主が毎年夏に訪れるようになり、やがて鮎の名所として定着したそうです。
 そんな歴史あるやな場は、2016年に熊本地震で同町が被災し、人口1万1千人の町民のうち2千人近くが避難所生活を余儀なくされた時期も、変わらず営業を続けてきました。しかし、年間約1万4千人が訪れていた同場も、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、20年と21年は閉場。雑草は伸び、石積みが崩れたまま放置されていました。
 そんな中、町の活性化に取り組む若手有志のグループである、一般社団法人パレットが再開の道を探ります。「甲佐町で生まれ育った私たちにとって、やな場は原風景。このままだと甲佐町らしさが失われてしまうのではという危機感がありました。そこで代々この場所を守られてきた方に相談にうかがいました」と語るのは、パレット代表理事の大滝祐輔(おおたき・ゆうすけ)さん。しかし高齢であること、後継者がいないことを理由に難色を示されます。
 そして、あなたがた若い人たちが再開してはどうかと提案されました。「迷いましたが、この場所をこれからも地元の人間が守っていくことが大事ではと思い、次の世代へのつなぎ役として、自分たちがやろうと決意しました」(大滝さん)  
 やな場の所有者である甲佐町の承認を得て、4月に施設を借り受けた大滝さんたちは、オープンに向けて準備を進めます。川の上流にある竹林から400本近い竹を切って運び、先代管理者や経験者の指導のもと、多い日は20人近くで集まってやな場づくりに取り組みました。そして6月1日、再開に至ります。
「今年から営業時間を1時間延長し、6〜11月のみだった営業期間を通年にしました。そうすることで、観光客がこの町に泊まり、町内を周遊するきっかけになれば」。そう語る大滝さんたちによる、古民家を改装したホテルの開業や、レストランの充実などの取り組みも進んでいます。
 なお、夏が旬の食材である鮎は、栄養も豊富。熊本県立大学教授の栄養学者・友寄博子(ともより・ひろこ)さんによると、鮎はビタミン、ミネラルを幅広く含有。カルシウムが突出して多いことも特長で、なんと牛乳(普通牛乳100g)の4〜5倍。また、内臓にも多量のカルシウムや各種ビタミンが含まれているため、一匹まるごと食べるほうが栄養の観点からはよいそうです。熊本名物の鮎は、代々の上様の骨密度低下を防ぎ、夏場の健康維持にも一役買っていたのかもしれません。

(一社)パレット代表理事・大滝祐輔さん

(一社)パレット代表理事・大滝祐輔さん。

茅葺きの5棟のあずまや
茅葺きの5棟のあずまや

茅葺きの5棟のあずまやがコの字型に連なり、水への親しみをおぼえる不思議な空間を構成。

店舗情報

甲佐町やな場

甲佐町

●所在地/〒861-4607

熊本県上益城郡甲佐町豊内19-1

●電話番号/096-234-0125

●営業時間/夏期は11〜21時(日・祝は20時まで)

●定休日/第1・第3火曜日

「pomodoro」(ポモドーロ)とは……「pomodoro」(ポモドーロ)とは……

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 pomodoroは、トマトを意味するイタリア語。
 イタリア料理の食材と、熊本で採れる食材は共通点が多いことから名付けました。

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