阿蘇の白川水源入口にある物産館には、湧水(ゆうすい)を1秒で1滴ずつ落とし、6時間かけて淹れるコーヒーがあります。熊本の名水を味わえるこのコーヒーには、地元の人々の、ある思いが託されています。

6時間かけて専用のコーヒードリッパーで抽出するため、1日20杯と数量限定。
毎分60トンもの水が湧き出る
熊本を代表する
水源・白川水源とは?
熊本市内を流れる一級河川・白川の水源の一つである白川水源は、「水の生まれる里」として知られる熊本県南阿蘇村の代表的な湧泉です。水神を祀(まつ)る白川吉見神社の境内よりコンコンと湧き出し、毎分60トンもの豊富な水量を誇ります。この水量は6日にすると、約86,000㎥にもおよび、古くから枯渇しない水源として地元で重宝されてきました。また、水が湧き出す場所では、地底の砂がゆらゆら動くのが見えるほど透明度が高いことも特徴です。それを表すかのように、1985年には環境省が日本全国から選ぶ“名水百選”にも選ばれました。
白川水源の湧水と
コーヒー豆の
“おいしい”化学反応。
8月初旬。白川水源の南阿蘇物産館「自然庵(しぜんあん)」コーヒー担当の佐伯京子(さえき・きょうこ)さんに、自然庵で提供される水出しコーヒーのおいしさの秘密を教えてもらいました。こだわりをうかがってみると、「苦味を抑え風味が豊かで口当たりがマイルドなコーヒーにするために、1秒に1滴ずつ水を落とし、6時間かけて抽出しています。また、抽出後も4日間エイジングする(寝かせる)ことで、コーヒーの風味を引き立て自然な甘さを引き出しています」
コーヒーといえば、ドリップ抽出をイメージしてしまいますが、なぜ水出し抽出なのでしょうか。「エスプレッソ抽出やドリップ抽出だと高温での抽出となり、どうしてもコーヒーの味に強い苦味が出てしまいます。そのため、白川水源の水に合うようにと、苦味が抑えられる20度前後で抽出する水出し抽出を自然庵では採用しています」
そして、ブレンドのコーヒー豆は、「力強い味をイメージして、ブラジル・コロンビア・グアテマラの3カ国の豆を深煎(ふかい)りして配合しています」。これらの豆を深煎りすることで、味は濃くなり、余韻にスッキリした酸味が出るのだそうです。こだわりの抽出方法と、水質に合った豆の組み合わせによって、自然庵の水出しコーヒーは、マイルドな口当たりと、その後の深いコクと酸味が融合し、特徴的な余韻を実現しているのです。
それにしても、年間50万人が訪れる観光地の忙しい売店で、1杯のコーヒーを出すためだけに、なぜこれほどまでに手間と時間をかけるのでしょうか。
「この商品を提供するきっかけとなったのは、2016年に起きた熊本地震です。南阿蘇も災害の影響で観光客が減ったとき、『湧水』をキーワードに南阿蘇の水のよさをPR出来る商品を、との声があがりました。そこで、世界中からコーヒー豆を輸入し販売する『まる味屋(みや)珈琲店』と、地元に住む『自然庵』の従業員たちが意見を交わし合いました。そして、水源のイメージに合ったコーヒー豆を選んでブレンドし、商品名に水源の名を入れて提供することにしたのです」
南阿蘇の魅力を伝えたい。そんな地元の人々の思いから実現した商品。南阿蘇の白川水源を訪れた際には、ぜひこの水出しコーヒーでほっと一息ついてみてください。

「白川水源」780円(税込)。
自宅でも楽しめるよう豆と粉でも販売されています。


