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創業から69年。熊本ラーメンの源流をくむ「黒亭」の味。

2026/06/15

創業から69年。熊本ラーメンの源流をくむ「黒亭」の味。

Photo/
Yamagashira Noriyuki
Text/
Kurata Shuhei

2011年の新幹線開通をきっかけに、駅舎の改築や商業施設の新設が進む熊本駅周辺。
めまぐるしく変化する風景のなかに、地元の人にも観光客にも愛される、創業69年の老舗があります。
「熊本ラーメン 黒亭」(以下、黒亭)です。
玉名市の「三九」に始まる熊本ラーメンの源流は、「こむらさき」を経て、「黒亭」へと続いています。
その特徴や歴史を、創業者の孫であり、3代目社長である平林京子さん(最初の写真)に聞きました。

チャーシュー

チャーシューには秘伝のタレを使用。
味の染みたジューシーな食感です。

中太麺

ツルツルとした食感、モチモチとした歯ごたえの中太麺。
スープとの相性も◯です。

創業者は、
画家夫婦。

 1957(昭和32)年、黒亭を創業したのは、平林武良さんと絹子さんの夫婦です。それまで武良さんは、画家として活動していました。そんな武良さんが同店を開業するに至った経緯を、孫であり3代目社長である平林京子さんは次のように語ります。
 「祖父は熊本県の人吉出身。太平洋戦争中に満州に移り、戦後、熊本に戻りました。当時、画家仲間とよく通っていたラーメン店が『こむらさき』さんです。初代店主である山中安敏さんが画業を応援してくれていたようで、絵だけでは生活できない祖父に対し、ラーメン店はどうかと提案してくださったそうです」
 「こむらさき」は、熊本ラーメンの祖である玉名市の「三九」から影響を受けた店主が開いた、代表的な老舗の一つ。そこでの修行を経て、57年に独立。人の行き来が盛んだった国鉄(当時)の熊本駅前に店舗を構えます。店名の由来は、武良さんが好んで使用していた絵の具の色。「ほかにも、経営がうまくいって黒字になるように、という祖母の思いも重ねていたそうです」(京子さん)
 初代社長の武良さんが水難事故で急逝した70年からは、妻の絹子さんが2代目として店を切り盛り。小学校3年生までは自宅がお店の横にあり、絹子さんと一緒に過ごしていたという京子さん。「学校が休みの日は、よくラーメンを家の食卓に持ってきて食べていました。従業員の方々はやさしく、私が母と喧嘩したときは厨房に逃げ込み、なぐさめてもらいました」
 当時の絹子さんの様子を京子さんに聞くと、「一日中お店で働いていた印象です。朝6時からスープの仕込みを始め、夜8時半の終業後は、遅くまで片付けや仕込みをしていました」とのこと。そんな絹子さんも、80歳を前に体調を崩します。
 このまま絹子さんが働けなくなったら、黒亭はどうなるのだろう。当時26歳だった京子さんは、不安をおぼえました。そしてある決断をします。
 「もともと祖母からは、『店は継がんでよか』と言われていました。けれども、お店がなくなってしまうのは、働いてくれている従業員の方々や、お店を愛してくれているお客さんに対してよくないと思い、勤めを辞めて跡を継ぐと決めました。孫の自分がそうするのが自然なことに思えたのです」

玉子入りラーメン

玉子入りラーメン

1,200円(税込)
2代目社長が考案した生卵のトッピング。そのまろやかさが味に深みを出します。

焦がしにんにく油

焦がしにんにく油を、毎日手作業で、2〜3時間かけて準備します。

豚の頭の骨を巨大な釜で炊きあげるスープ

豚の頭の骨を巨大な釜で炊きあげるスープは、あっさりながらも旨味と深いコクを感じられるのが特徴。

「お客様のために」
伝統の継承と革新。

 2005年に入社し、08年から3代目社長として働く京子さん。まずはじめに取り組んだのは、スープの改良でした。
 「黒亭のとんこつスープは豚の頭蓋骨のみを使用しています。そのあっさりとしたスープに、焦がしにんにく油を加えてコクを出すのが黒亭の特徴です。創業時からそれは変わっていませんが、私が入社したころ、お客様からスープが薄いというご意見をいただきました。お店に受け継がれてきた味ではありますが、よりおいしいと言っていただけるように、煮込み時間を変えるなどして味を改良しました」
 13年には、敷地内にスープ室を設置。仕込みに一日、寝かせるのに一日かけた特製のスープは、毎日ここでつくられており、本店のみならず、近隣の桜町熊本城前店、下通店へ配送されています。
 伝統を受け継ぎつつ、よりよいものを提供したいという京子さんの思いは、スープだけでなく、麺にも及びます。11年、それまで外注していた麺を自社製造に切り替えました。その理由には、こだわりのスープに合う麺にしたいという考えと、卵アレルギーがある方でも食べられるようにしたいという配慮がありました。
 それまでの麺と異なり、卵由来のものを一切含まない麺を開発するのには長い試行錯誤があったそうです。「開発に関わるメンバー全員が納得する味が決まらず、何度も試作を繰り返しました。そんななかで、石臼挽きの小麦粉を少量加えることで独特の風味が生まれることに気づき、現在の麺が完成しました」
 改良を加え、進化をしていく黒亭のラーメンは、地元の常連客はもちろんのこと、海外からも多くのお客さんが訪れます。繁忙期には、本店で一日600杯、観光客の多い下通店では日に800〜900杯ほどの注文が入るそう。その黒亭は、来年で創業70周年を迎えます。
 「70周年に関してはさまざまな企画を考えています。さらに、黒亭の熊本ラーメンを後世に伝えつつ、その未来を担う若いスタッフたちが夢を持てる場にしたいと考えています。そのためには新しいことにチャレンジしていきたいですね。この熊本ラーメンがどこまで通用するか、海外への展開なども構想しています」
 いまや熊本ラーメンの王道とも言われる黒亭。けれども、安住を選ばず、さらなる可能性を求めるチャレンジを続けています。

自宅で黒亭の味を楽しめるおみやげラーメン

自宅で黒亭の味を楽しめるおみやげラーメン。
(左)黒亭ラーメン4食箱入り1,890円(税込)/(右)黒亭白胡麻担々麺そぼろ付き2食箱入り1,188円(税込)

全店共通の調理マニュアルが作成されています

どの店舗でもアツアツでおいしいラーメンを提供するために、全店共通の調理マニュアルが作成されています。

筆者の地元にある黒亭本店

筆者の地元にある黒亭本店。学生時代に友達と食べた青春の味は、いまも変わらずそこにありました。

店舗情報

熊本ラーメン 黒亭

熊本ラーメン 黒亭

●所在地/〒860-0051

熊本県熊本市西区二本木2-1-23

●営業時間/10:30〜21:00

●定休日/なし

●電話番号/096-352-1648

↓店内には創業者で画家の平林武良さんの作品を展示。
店内

「pomodoro」(ポモドーロ)とは……「pomodoro」(ポモドーロ)とは……

 「熊本がもっとおいしくなる」をコンセプトに、熊本のグルメ情報や文化をお伝えするフリーマガジンです。年3回発行し、熊本市内の交通要所や観光名所等で配布しています。

 pomodoroは、トマトを意味するイタリア語。
 イタリア料理の食材と、熊本で採れる食材は共通点が多いことから名付けました。

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