クラシックプリンと
香り高いコーヒーで
のんびり。
時代を超えて愛される、築百年の素敵な洋館が熊本市街にあります。
その2階にある長崎次郎喫茶室で、人気のレトロスイーツと、オリジナルブレンドが楽しめます。
熊本旅行のうるわしい思い出に。
あなたも、訪ねてみてください。

窓のアーチが特徴的な建物は保岡勝也によるもの。東京駅の設計で知られる辰野金吾に師事した建築家です。
はじまりは明治期に
創業した書店。
長崎次郎喫茶室は、骨董商だった長崎次郎氏によって1874(明治7)年に開業された書店がはじまり。文豪・森鷗外が訪れた記録が残り、熊本の旧制高校で教鞭を執っていた夏目漱石や小泉八雲も訪れていたといわれる場所です。現在の建物は、1924(大正13)年に竣工したもの。その2階で現在、長崎次郎喫茶室を営んでいるのが、書店創業者の子孫である長崎圭作さんです。
喫茶室開業のきっかけは、2014年、書店を経営していた圭作さんのお兄様が、病気のため書店を続けられなくなったことです。熊本市民に愛されてきた、先祖の遺産をどうにか次の時代に残したいと考えた圭作さん。最初は、奥様が好きなコーヒー専門店の豆を売る店にしようと思ったそうです。
けれども、「2階の窓辺に座って、路面電車が走る風景を見ていたとき、これを眺めながらくつろいでもらえる空間をつくれたら」と圭作さんは思います。そして、この窓外の風景をはじめ、歴史ある建築の優雅な空間や、圭作さんご夫婦の好きなコーヒーを楽しんでもらうための喫茶室を開くことを決めました。

窓からの風景。この眺めを残すために、圭作さんは喫茶室を開きました。

長崎圭作さん(右)
創業者・長崎次郎氏の玄孫。家業の楽器店を経営するかたわら、2014年に長崎次郎喫茶室をオープン。村上春樹も座ったという窓側いちばん奥の席が、圭作さんのお気に入りの場所。左は長男の右京さん。
熊本らしさが香る、
こだわりのコーヒー。
同年、書店の経営を圭作さんのはとこが継ぎました。圭作さんが喫茶室をはじめるにあたって思い描いたのは、時代にとらわれないスタンダードな喫茶店。こだわりは、コーヒーでした。淹れるとき、蒸らし時間を守ります。風味が立ち、また、ほどよく温度が下がることで、香りや味をより楽しめるといいます。
提供するコーヒーに使う豆は、専門店から厳選して仕入れています。お店の顔である次郎ブレンドは、飲みやすい味に。注文してみると、雑味がなく、軽やかな酸味を感じ、親しみやすさをおぼえました。「ほかにも、熊本らしさのあるコーヒーをと思い、ゆかりの文豪や偉人のイメージを取り入れたブレンドをつくれないかと、仕入れ先に相談しました」
そして、ドリップバッグのおみやげとして、「漱石ブレンド」「鷗外ブレンド」「清正公ブレンド」の3種類も開発。「甘党として知られる漱石のコーヒーは、甘いお菓子に合うように。悪食といわれた鷗外のは、不思議な味になるとおもしろいと思ったんです。いずれも人気で、飲みやすく仕上がっています。清正公にちなんだブレンドは、豪快かつ繊細といわれる加藤清正公の人柄をイメージした味。飲んで確かめてもらえればうれしいです」

水出しアイス珈琲 950円(税込)。
クリアな苦味でスッキリと飲める一品。
数量限定品。

次郎ブレンド 790円(税込)。
なつかしさあふれる、
“純喫茶スイーツ”。
お店の名を冠する「次郎風フレンチトースト」は、シロップまで手づくりの人気スイーツです。「もともと、息子のおやつとして家でつくっていたんです。おいしいからお店でも出してみたら? と家族に言われ、4年ほど前からメニューに加えました」と圭作さん。すると、食べた人がSNSに写真をアップして、これを目当てに来店する人が増えたそう。
卵を吸ってトロトロ、フワフワの、かすかに洋酒が香るトースト。とろりとしたシロップが滴り、コーヒーにもよく合います。「シロップのレシピは秘密です。でも、とろっとした口当たりは、教えてもほかの人には再現できないかも(笑)」
もうひとつの人気スイーツが、年間1万食を超える注文が入るという、「クラシックプリン」。やや固めで、口に入れると卵の風味が広がります。「食材の仕入れ先に、固めのプリンをつくりたいと相談し、一緒に考えてできたのがこの味です。年配の方にはなつかしく、若い方にはめずらしいと思ってもらえる味ではと思います」

次郎風フレンチトースト 950円(税込)。
トーストからシロップまで、すべて手づくり。
町のシンボルである
洋館を未来へ。
2024年夏、惜しまれつつ、書店が営業を休止。圭作さんにとって、書店と喫茶室は「ふたつでひとつ」のものだったため、ショックは大きかったと言います。一時は客足が遠のきましたが、ご子息の右京さん(23歳)にアイディアをもらい、メニューの刷新やSNSでの発信を強化した結果、カップルや近隣の学生など、若いお客さんが増えました。
家族で、先祖の遺産を守る圭作さん。「この建物の灯がついていると安心する。そう言ってもらえるんです」。街に愛され、世紀を越えて、いまなお残るこの洋館で、熊本の午後のひとときを楽しんでみませんか?

大正時代に書店で使われた帳簿が、店内に飾られています。

店内のアップライトピアノを演奏するイベントも、定期的に開催されています。

昨年、おみやげコーナーをリニューアル。
量り売りの豆やお菓子で充実。

おうちで楽しむ“文豪ブレンド”のドリップバッグは各324円(税込)。

