湧水の郷で受け継がれる、ほかにはない味わい。創業154年の醤油蔵。阿蘇マルキチ醤油

2026/10/13

湧水の郷で受け継がれる、ほかにはない味わい。創業154年の醤油蔵。阿蘇マルキチ醤油

Photo/
Hara Fumihiro, Nakanishi Hirohito
Text/
Taninaka Takashi

熊本県東部、観光列車として人気の高い、南阿蘇鉄道の終点・高森駅。そこから徒歩10分の距離にある「阿蘇マルキチ醤油」は、標高555メートルの高地にある醤油醸造蔵です。有名な水源や豊富な湧水に恵まれた高森町は、夏は気温30度を超え、冬はマイナス10度を下回る寒暖差の激しい地。その環境から生まれる、おいしさの秘密がありました。

白川水源

白川水源
「阿蘇マルキチ醤油」のある南阿蘇は、熊本を代表する水源「白川水源」がある水がきれいな地。

阿蘇マルキチ醤油

おいしさの秘密は、湧水と“酵母”。

 山々が寄り添うシルエットが美しい阿蘇五岳と、世界一のカルデラを誇る外輪山の内側にある高森町は、南阿蘇の奥座敷と呼ばれる、静かで緑あふれる土地。その高森町に1870年(明治3年)、吉良徳七(きら・とくしち)氏が創業した「阿蘇マルキチ醤油」があります。ここは、他県からもリピート客が訪れるほど人気の醤油蔵。人々が魅了される、その理由はなんでしょうか。運営する豊前屋(ぶぜんや)本店5代目社長の吉良充展(きら・みつのぶ)さんに、おいしさの秘密を聞きました。
 「醤油の原料は、大豆、小麦、塩、そして水です。この高森町には、醤油づくりには欠かせないきれいな天然の水が湧いています。それが醤油のおいしさにつながっています」
 看板商品である「大吟(だいぎん)」は、まろやかで甘すぎない味わい。豆腐や刺身、煮付けなど、どの料理にもよく合います。
 さらに、おいしい醤油づくりで大事なことを聞くと、「よい麹(こうじ)をつくること。次に、適切な櫂(かい)入れ(もろみの管理)を行うこと。そして、搾った生醤油を加熱して風味を調整すること。この3つで味のよしあしが決まります。それらを念頭に、創業以来の製法で伝統の味を受け継いでいます」と教えてくれました。
 「醤油の味は、旨味、塩味、甘味、酸味、苦味のバランスで決まります。それらを左右する、蔵の環境も大事です。醤油醸造蔵には“蔵グセ”といわれる、それぞれの蔵特有の味があります。うちの場合、夏と冬で寒暖差40度以上もある過酷な環境に耐えられる酵母が、蔵に棲みついています。さらに、乳酸菌やその他の細菌もいて、気温や湿度などに応じて増殖と減少を繰り返しています。
 これらの菌の加減によって、旨味の素のアミノ酸や、甘味の素のブドウ糖、酸味を感じさせる有機酸などの配合が変わります。そのため、この蔵に棲みついている酵母や乳酸菌だからこそ、味の絶妙なバランスを生み出し、マルキチらしさをつくってくれているのです」(吉良さん)
 南阿蘇の気候風土ならではの酵母や乳酸菌から生まれた醤油は、同じ製法でつくったとしても、この場所でしか再現できない味わいがあるのでした。

阿蘇マルキチ醤油
阿蘇マルキチ醤油
阿蘇マルキチ醤油
阿蘇マルキチ醤油

大正レトロ復刻版「大吟100ml」

大正レトロ復刻版「大吟100ml」648円(税込)。
女性向けメディアでも紹介された、レトロな醤油差し。食卓に置くだけで、気分が上がります。

大吟

「大吟500ml」500円(税込)。
外輪山から生まれる湧水を使用。甘味と塩味のバランスがよく、どんな食材にも合う看板商品です。

しょうゆ最中アイス

しょうゆ最中アイス 360円(税込)。
濃厚な醤油アイスと、甘じょっぱい醤油蜜の相性が◎です。

吉良充展さん

吉良充展さん
1967年、熊本県高森町生まれ。東京の大学を卒業後、証券会社に勤務。91年、帰郷し「阿蘇マルキチ醤油」を運営する豊前屋本店の経営に参画。2007年、社長に就任。

column

人気商品は、
醤油に
とどまりません。

 醤油以外の調味料も開発・販売されており、人気は「ジャンジャンかけてうまいっ酢」です。
 「鹿児島の黒酢と、うちの醤油を組み合わせ、開発した商品です。通年でおいしく感じられる塩梅を求めて、1年以上かけて仕上げました」。甘味と酸味、塩味のバランスがよく、キャベツにかけるとおかわりしたくなるほどです。
 吉良さん曰く、この17年で70種類以上の商品を開発したそうです。「1973年には、全国の醤油の年間出荷量は約129万キロありましたが、2022年には約69万キロにまで減少しています(※)。このあたりでは、もううちしか醤油蔵はありません。
 それでもマルキチの看板を守り、醤油を核としながらも、さまざまな角度で伝統の製法と味を次世代につなぎたい。そんな思いで、いまの時代を見据えた新商品も手がけています」
 変わらぬ味を守りつつ、変わりゆく時代に合わせ、人々の味覚を楽しませてくれる「阿蘇マルキチ醤油」。熊本のおみやげにぜひ。

 

※しょうゆ情報センター調べ

 

ジャンジャンかけてうまいっ酢
ジャンジャンかけてうまいっ酢200ml 620円(税込)
酢の物や南蛮漬けなどの料理の味付けはもちろん、サラダのドレッシングにもぴったりです。

店舗情報

阿蘇マルキチ醤油

阿蘇マルキチ醤油

●所在地/〒869-1602

熊本県阿蘇郡高森町高森1231

●営業時間/9:00-17:00

●定休日/毎月第一日曜日

●駐車場/10台

●電話番号/0967-62-0535

●オンラインショップ/https://asonokura.shop-pro.jp

「pomodoro」(ポモドーロ)とは……「pomodoro」(ポモドーロ)とは……

 「熊本がもっとおいしくなる」をコンセプトに、熊本のグルメ情報や文化をお伝えするフリーマガジンです。年3回発行し、熊本市内の交通要所や観光名所等で配布しています。

 pomodoroは、トマトを意味するイタリア語。
 イタリア料理の食材と、熊本で採れる食材は共通点が多いことから名付けました。

 フリーマガジンとウェブ版である当サイトは、阿蘇の高森町に第二本社を置く出版社コアミックスが発行・運営しています。