おしゃれな古書店やパン屋さんが集う、熊本市街の並木坂。
そこから一本入った坊主通りに、八百屋さんが営むフルーツパーラーがあることを知っていますか?
訪れる人を魅了する、こだわりの世界をご紹介します。
※記事内のメニュー、価格は取材時のものです(2025年4月時点)。
並木坂に、
フルーツの新名所。
「10-6」と書かれた看板が目印。こぢんまりとした扉を開け、少し急な階段をのぼると、やわらかな陽が注ぐ、穏やかな空間が広がります。隠れ家のようなこの場所は、「10-6 並木坂フルーツパーラー」。徒歩1分の距離にある青果店「並木坂の八百屋さん」が経営しています。

隠れ家のようなパーラーで、
時間を忘れるひとときを。
蔵や古民家の一部を組み合わせてできた建物。店内を眺めていると、宝探しの気分。
両店のオーナーは、永岡成朗さん。2020年2月、前身のフルーツパーラー「Fruit Mer(フリュイメール)」をオープンしました。並木坂が自身の地元であること、周辺に競合店がないことから、いま「並木坂の八百屋さん」がある場所にお店を構えます。しかし、直後に新型コロナウイルスが猛威を振るいます。「お客さんが一日に0人。来ても一人とか。その状況が3か月くらい続きました」と永岡さんは当時を回想します。
来店客を増やそうと、永岡さんは11年携わった果物の仲卸で得た経験と知識を活かし、店内で果物と野菜の販売をはじめます。すると、しだいに来る人が増えていったそうです。やがてコロナ禍が過ぎ、店内の席が埋まるようになると、スイーツ目当てのお客さんがゆっくりできる場所をと、24年5月3日、「10-6 並木坂フルーツパーラー」をオープン。「Fruit Mer」は「並木坂の八百屋さん」へと名前と業態を変えました。
同年5月10日には、八百屋さんの向かいにカット野菜専門店「やさいたべなさい。」もオープン。気軽に野菜を口にし、知ってもらうことが永岡さんの狙いだそう。フルーツパーラーで気に入った果物があれば、八百屋さんで購入可能です。まずは食べてみて、気に入ったら持ち帰ることができる。そんな体験ができる環境が並木坂にあります。

永岡成朗(ながおか・しげあき)さん
合同会社「TABEGORO」代表

パーラーで出会った果物を自宅でも味わってみるのはいかが。

お店を訪れたら、永岡さんにオススメを聞いてみるのも楽しい。

野菜を食べる習慣は、まずは気軽にカット野菜から。
八百屋さんだから
こだわること。
3月中旬。取材に訪れた日、パーラーに入ったフルーツは、サンふじ(りんご)、ハニーグロー(パイナップル)、ネーブル(オレンジ)、カラカラ(果肉がピンク色のネーブル)、甘平(みかん)、味っ子(みかん)、紅央(きんかん)、桃香(イチゴ)。これらを素材に、季節のカットフルーツとミックスパフェが提供されました。

ミックスパフェ
1,540円(税込)。8種類のフルーツを楽しめる、“旬”がいっぱいのぜいたくなパフェ。

季節のカットフルーツ
990円(税込)。色鮮やかなフルーツが盛りだくさん。想像以上のボリュームで驚くお客さんが多いそう。
季節のカットフルーツは、990円という値段からは想像できないほどのボリューム。色鮮やかで目にも楽しいスイーツに、わくわくを抑えきれないでいると、果物へのこだわりを教えてもらえました。
「厳しい目で選びます。自分で食べて、おいしくなかったら出さない。甘さだけではなく、コク、風味、のどごしも確かめます」。永岡さんはそう語ります。
そのお話を聞いて、ふだん果物を買う際に、糖度ばかりを気にしてしまうことを思い出しました。ミックスパフェやカットフルーツをいただいて、サンふじのサクッとした食感や、紅央のパリッと感が楽しく、甘みだけではない果物の楽しみかたを体験できました。とくにハニーグローと呼ばれるパイナップルは、のどまで伝わるほどのみずみずしさです。
永岡さんの味に対する厳しさや正直さは、農家さんとの関係にも表れています。永岡さんは農家さんに対し、「おいしかった」「おいしくなかった」とはっきり伝えるそうです。嘘のない、率直な言動は、かえって農家さんからの信頼を得ることにつながりました。さまざまな相談を受けるようになったいま、品種のトレンドから出荷時のパック詰めまで、惜しみなく、長年の経験で得た知見をもとにアドバイスします。

イチゴのキャラメルパフェ
1,540円(税込)。八百屋さん直営店だから味わえる、“その日おいしい”イチゴをふんだんに。
永岡さんのこだわりは、人気のイチゴパフェにも表れていると感じました。パフェに使用するイチゴは、品種を絞っており、12月から2月末までは「すず」や「恋みのり」という品種。取材した3月中旬に永岡さんが選んだのは、「桃香」という品種でした。イチゴのキャラメルパフェをいただくと、「桃香」のよい香りが鼻に届き、いくらでも食べたくなるスッキリとした甘さでした。
昨年は、5月上旬までイチゴのパフェを提供していたそうです。今年の見通しを聞くと、「イチゴパフェを出すのは、今年の5月は難しいかもしれない。マンゴーやメロンはあるかもしれません。でも果物の出来は、そのときになってみないとわからないので、来てのお楽しみと思ってもらえれば」とのこと。今年はどんな果物が、永岡さんの厳しい審査をくぐり抜けるのでしょうか。季節が変わるたび、訪れたくなります。
永岡さんの
次なるチャレンジ。
「並木坂の八百屋さん」を一代で築いた永岡さん。その場所のニーズや世情に耳を傾けながら、柔軟にお店のスタイルを変えてきました。次にチャレンジしたいことは、「無人販売所を増やすこと」。22年に市内の新屋敷、23年には帯山に無人販売所を開設。帯山は1年で撤退しましたが、新屋敷は営業中。周囲に買い物をする場所が少なく、また、人件費がかからないぶん、価格を抑えて野菜や果物を提供できることから、近隣の方から「ここに販売所ができて助かっている」と感謝の声をもらえるようになったそうです。
「ここ数年でぼくも考えかたが変わり、『ありがとう』を聞けることがうれしいと思うようになりました。そういう声をいただけるのって、プライスレスな価値がありますよね」
そのまなざしは、品質に厳しく、人に誠実で、あたたか。そんな永岡さんが選んだ果物に出会える並木坂に、あなたも、足を運んでみてください。食べて、感じて、手に取ってみる。その体験は、熊本散策に特別な思い出をくれるはずです。

うさぎの形をした釘隠しが、店内のいたるところに。

階段を降りるときに目に入るランプは、潜水艦で使われていたもの。

船の部品が脚になったテーブル。

「並木坂の八百屋さん」では、散策しながらでも食べやすいスイーツを購入することができます。
いちごガトー 700円(税込)。

いちご飴 400円(税込)。

アサイーボウル 540円(税込)。



